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債務超過の企業オーナー必見!金融機関交渉の極意

[著]:小川 潤也

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金融機関から借りたお金を返せない……経営者にとって何より恐ろしい事態です。

経営者としては、なんとか会社を潰さず、個人資産にも傷をつけずに乗り切りたいところ。本記事では、債務超過に陥ったオーナーがどのように金融機関と交渉すべきかのポイントをまとめました。

当社には大手都市銀行でM&Aや融資、不良債権の回収などを経験したメンバーもおり、金融機関の目線を踏まえた実践的なノウハウを解説します。

金融機関は債務超過の企業をどのように処理するのか

金融機関はの債務超過

銀行をはじめとする金融機関は、債務超過に陥ってしまった企業に対して大きく以下の3つの処理を求めることになります。

①返済をリスケし、経営再建させる

金融機関が提携する税理士などに協力を仰いで再建計画を提出させ、返済をリスケして経営を再建させます。

リスケによって猶予してもらえる期間はマックスで3年程度。経営者が自社の経営を続ける意思があり、また現実的に再建ができるのであれば最善の解決策でしょう。

ただ、既にリスケをしてもらっていれば当然、猶予には限界が訪れます。リスケ期間中は新規の融資は原則受けることができませんから、実際には再建は茨の道であるケースが多くなります。

②法的整理(会社更生法、民事再生法)させ、スポンサーを探して再生をはかる

これ以上のリスケが難しいと金融機関が判断した場合、法的整理も止む無しのニュアンスを伝えてくることもあります。

自力再建を断念し、法的整理(会社更生法や民事再生法)をし、スポンサーを探して、再生する道も選択肢のひとつです。

この場合のメリットとしては、「再生プロセスの透明性が高く、ステークホルダーの理解が得やすい」裁判所が関与の元、一定可決要件による利害調整が可能」「スポンサーや短期的資金の出してを比較的容易に探せる」などがある一方、デメリットもあります。

「企業イメージの悪化、事業価値が毀損する可能性が比較的高い」「時間と手間がかかる」「弁済計画や財務リストラ、スキーム策定に置いて、債権者への合理性、衝平性を満たすことが必須」「オーナー経営者の個人保証問題も同時に法的整理の下で処理されることが多い」

③私的整理をして、スポンサーを探して再生を目指す

一般に債権者が金融機関のみの場合、まずはリスケ、資本増強、債務免除、債務の株式化(デッドエクイティスワップ)などの財務リストラを進めていきます。

その際には私的整理のもと、金融機関と交渉を進めていきます。最終的にどのような出口を見出せるかは、金融機関がどの程度協力してくれるか、また、事業に価値があり、スポンサーを見つけることができるかにかかっています。

この私的整理のメリットは①ブランド価値を毀損することなく、再生プロセスを進めることができる②短期間での実施が可能③経営者保証ガイドラインによりオーナー経営の個人保証問題の解消余地がある、などです。

デメリットは①再生プロセスの透明性が低い②増減資や事業譲渡について、株主総会の特別決議などの会社方法の手続きが必要。③権利変更を要する全債権者の同意による利害調整が必要④法的整理下の企業に適用される特別な税務メリットの享受余地は少ない、いったことになります。

回収額が同じなら金融機関は私的整理による債務免除より破産を選ぶ

債務免除と自己破産

リスケによる経営再建が難しい企業の場合、残された選択肢は「再生型M&Aで売却」か「破産」させるかです。金融機関とっては当然ながら、返済してもらえる金額がより大きな手法をとってほしい、ということになります。

ただ、もし回収額が同程度であった場合に金融機関が求めるのは、破産による処理です。

再生型M&Aで売却した場合、金融機関は事業の売却代金から返済を受けますが、残債よりも売却代金が少ない場合はその分を金融機関が一部免除する必要があります[債務残高-売却代金(回収額)=債務免除額]。この場合、破産した時の配当よりも回収額が多くなければなりません。

破産であれば清算処理により、法定の優先回収権を有する再建から順に弁済・配当をし、清算が完了します。

結局、多くのケースで、リスケが限界になれば銀行は「もう法的処理して、スポンサーを探すかしかありませんね」と言ってくることになります。
「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」という言葉を経営者が実感する瞬間です。

再生支援協議会への相談は私的整理のファーストステップ

再生支援協議会への相談

自力での経営再建が難しい場合、金融機関が「再生支援協議会」への相談を勧めてくるケースもあります。

再生支援協議会は金融機関のOBや公認会計士、税理士、中小企業診断士などから構成された公的機関です。47都道府県に設置されており、東京都では東京商工会議所が受託・運営しています。

金融機関は債務超過の企業に破産を求めることが多いですが、再生支援協議会は中立の機関なので、「売却してはどうか」などと提案してくれることもあります。再生支援協議会からのお墨つきがもらえれば、金融機関にあるM&Aチームに話が戻され、M&Aの検討を進めていくことになるのです。

再生支援協議会の窓口相談は無料なので、金融機関から勧められなかったとしても一度足を運んでみるといいでしょう。

まとめ

経営者にとって、もうこれ以上借入金の返済をリスケしてもらうことが難しい場合、破産ではなく売却によって解決を図りたいところです。

ただ、本記事で述べたとおり、売却を金融機関に納得してもらうのは決して簡単ではありません。

ぜひお勧めしたいのは、金融機関交渉に精通した弁護士を雇い、窓口として交渉に当たってもらうことです。

金融機関交渉は弁護士なら誰でもできるというわけではありません。信頼できるM&Aアドバイザーを通じて、売却を見据えた金融機関交渉の専門知識を持った弁護士を紹介してもらうのが最良でしょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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