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M&Aの失敗事例ご紹介! 経営者がM&Aを途中で辞めてしまう理由とは

[著]:小川 潤也

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M&Aは経営者にとってそう何度も体験するものではありません。

M&Aは成功すれば大きな成果をもたらす一方、失敗すれば多くの問題を引き起こす可能性があります。

今回の記事では、経営者が途中でM&Aを辞めてしまう理由に焦点を当て、具体的にどんな理由でM&Aを辞めるのか失敗事例を解説しましょう。

失敗事例その1:途中で一時的に業績改善する

経営者がM&Aを検討する際、会社の業績が悪化している場合があります。

しかし、M&Aの交渉が進行している最中に業績が回復し、会社の将来性が明るくなると、売り手の経営者としては「まだ、やれるかもしれない」と売却することがもったいなくなってしまうことがあります。こうした場合、経営者は自社の可能性を再評価し、M&A中止の判断をすることがあるのです。

このような事例で問題となるのは、根本的な問題が解決できていない点です。

昨今の日本において、M&Aを検討する会社が増えている大きな要因の一つとして、後継者不在問題が挙げられます。前述のように業績が一時的に回復したとしても、後継者が見つかったわけではないので、後になって「あの時に売っておけばよかった」と後悔することもあり得ます。

とくに経営者や役員、従業員が次々と高齢化しているケースでは、経営者が売れる時に売る判断をすることが大事と言えるでしょう。

失敗事例その2:提示金額が低かった

経営者はしばしば自社の価値を過大評価することがあります。

M&A交渉において提示された買収価格が、売り手の期待よりも低い場合、売却を躊躇するか中止する可能性があるのです。経営者は自社に対して強い愛着を持っており、それに見合った価格を望むのですが、多くの失敗事例はその設定価格に根拠がないパターンです。

たとえば、その自分での設定価格が純資産やのれん代などをどんなに高く評価しても、過大な自己評価の場合があります。また、1億円あれば老後も困らないから根拠なくほしい金額を設定する場合などです。

希望価格の設定が自分都合の場合は要注意。金額の条件が厳しすぎないかどうかをM&Aの専門家に相談することをおすすめします。

失敗事例その3:買い手の条件が厳しすぎた

M&A交渉において、買い手が厳格な条件を提示することがあります。これには価格だけでなく、契約条件などが含まれます。売り手がこれらの条件を飲むことができない場合、買い手から交渉の中止を申し出てくる可能性があるのです。

このような失敗事例でありがちなのは、売り手の見立てが甘すぎる点です。

たとえば、M&Aで複数の買い手企業が現れるのは事業の将来性や新規性など、とにかく成長性や収益性が高く、経営者が変わっても再現性が担保されているケースです。一方、多くの場合は一社買い手が現れるだけでも奇跡的なのに、自社の利益を優先するばかりに厳しい条件を提示してブレイクするパターンが珍しくありません。

繰り返しになりますが、自社の価値を客観的に判断してくれる専門家の意見を聞いた方が、M&Aは成功しやすいでしょう。

失敗事例その4:資金繰りがもたなくなった

M&Aは多くの場合、大規模な資金が必要となります。

買い手がM&Aを進めるための資金を調達できない場合、M&Aプロセスは途中で中断される可能性があります。また、再生案件の場合、スポンサーから支援いただくまでの資金繰りの問題は経営者にとって深刻な懸念事項です。

基本的には事業再生をするためにスポンサーを探し始またら、銀行から運転資金の融資はでません。なぜなら、スポンサーが見つかなければ、その会社は倒産するからです。そんな状況で銀行は融資してくれません。よって、事業再生を目指す場合、銀行への返済を止めてもらい、それで資金繰りをやりくりできる事業でないと、難しいのが現実です。

このような失敗事例に陥らないためには、売り手となる経営者は事業の存続の危機を感じたタイミングでしっかりとM&Aをする決断をすることが重要です。

失敗事例その5:売り手が何かを隠していた

M&A交渉中、売り手が重要な情報や問題を隠していた場合、買い手からの信頼感を失い、ブレイクすることがあります。特に法令違反や負債の隠匿は重大な問題となり、M&Aの中止や失敗につながることがあるのです。

失敗事例としてありがちなのは、売り手企業に簿外債務があったり、従業員に関する情報に隠し事があったりすることです。売り手企業の経営者が辞めた途端に従業員も辞めるケースがあり、従業員も継続して雇用することを前提としている場合は買い手からすれば「話が違う」となるはずです。

とにかく隠し事は後になって絶対に発覚します。そうなると損害賠償などの話に発展し、せっかく売却できたのに大きな支出が発生する可能性すら考えられるのです。

まとめ

これらの事例からわかるように、M&Aは成功に向けて多くのリスクが伴います。経営者は慎重な検討と、客観的な判断が求められるでしょう。

自社の将来とリスクをきちんと見極め、M&Aの適切な判断をくだすことが成功への鍵となります。

また、トップ面談やデューデリジェンスを通じて、可能な限り情報を開示し、誠実な交渉を行なうことが、M&Aプロセスの透明性を高める一助となります。

成功の鍵は、事実を隠さず、経営者としてのスタンスを保つことにあるでしょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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