アドバイザリー契約とは、普段のビジネスではなかなか耳慣れない言葉かもしれません。
今回の記事では、アドバイザリー契約について、その役割や意味合い、契約内容について解説します。
M&Aにおけるアドバイザリー契約とは?
まず、M&Aにおけるアドバイザリー契約の定義を説明しましょう。
アドバイザリー契約は、M&A特有の用語ではない!
「アドバイザリー契約」とは、企業が求めるなんらかのアドバイスや提案を、外部の専門家にもらうための契約のことです。
アドバイザリー契約じたいは、M&Aに限った契約ではなく、財務や法務、ITなどの専門領域において、広くアドバイザリー契約が結ばれています。
M&Aにおいて「アドバイザリー契約」と呼ぶ場合、一般的にはM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社などにM&Aの仲介を依頼する契約を指します。
アドバイザリー契約の範囲は?
M&Aを希望する企業が、M&A業者とアドバイザリー契約を結ぶことで、その業者がもつネットワークのなかでの具体的な買い手探しが始まります。
逆に、「M&Aを検討しているが決めかねている」といった段階の相談レベルであれば、契約前に無料で相談できる業者もあります。
「まだ具体的な契約ができる段階ではないから……」とためらわず、まずは情報交換の感覚で、気軽にM&A業者に相談してみると良いでしょう。
自社が属する業界のM&Aのトレンドや、そもそも自社が売却できる可能性があるのかどうかなど、プロの視点で意見をもらうことで、具体的な判断に進むための判断材料になります。
アドバイザリー契約の契約内容
続いて、アドバイザリー契約の具体的な内容について説明します。
アドバイザリー契約に含まれる業務内容
M&Aのアドバイザリー契約では、例として次のような業務内容が定められます。
乙は、甲のために主に以下の業務を行う。
① 本件提携に必要な情報の提供及びサポート
② 本件提携に関する諸手続き及び日程の調整
③ 本件提携に必要な契約書等の作成のサポート
④ 本件提携交渉の立会い及び助言
⑤ その他本件提携に付随する業務
「本件提携」とは、M&A業者に依頼するM&A案件のことを指します。
こうした文言を見ると、M&Aのアドバイザリー契約で規定されるのは、かなり抽象的な業務範囲であることがわかります。
実際のM&Aの現場でも、当社のようなアドバイザリー会社は契約に則って杓子定規に対応するのではなく、クライアントの要望に寄り添った柔軟な対応をすることが求められます。
アドバイザリー契約と業務委託契約との違い
先ほどの条文例を見て、「アドバイザリー契約は、業務委託契約となにが違うのか?」と思われた人もいるかもしれません。
実はアドバイザリー契約とは、業務委託契約の一種です。
ただし、業務委託契約は、特定の業務をアウトソースして代行する契約であるのに対し、アドバイザリー契約はクライアントの疑問や困りごとに対して業者が助言をする契約というニュアンスがより強くなります。
M&Aに限らず、特定業務の代行だけでない幅広いアドバイスを行なう契約では、アドバイザリー契約が結ばれる場合が多いです。
アドバイザリー契約を結ぶ際の注意点
最後に、実際にアドバイザリー契約を結ぶ際に気をつけるべきポイントを解説します。
個別の条文については、業者の契約書を顧問弁護士などに確認すべきですが、ここでまず注意したいのは、「着手金」があるかどうかという点です。
M&Aのアドバイザリー契約は、ディールの開始前にまず振り込む着手金がある場合と、着手金がない場合の2つに大別されます。
大手の仲介会社では、ディール開始前に数百万円の着手金を求められる契約もあります。こうした着手金は、もしも最終的にM&Aが成立しなくても返ってきません。
くわえて、まったくM&A交渉が進んでいなくても、1年ごとに「契約更新料」などの名目で追加費用を請求する業者もいます。
M&Aのアドバイザリー契約を結ぶ際は、会社のキャッシュ事情と相談しつつ、M&A成約前に出費があるのかどうかを必ず確認しておきましょう。
まとめ
アドバイザリー契約の内容は、業者によって大きく異なります。
M&A業者とアドバイザリー契約を締結する前には、必ず契約書を細かくチェックする必要があります。
契約の確認不足で後から不利な条件が発覚しても、一度ハンコをついてしまえば、契約変更を主張するのは難しくなるので、十分に注意しなければなりません。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役