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M&A業界の知られざる「営業マン事情」! ――信頼できるパートナーか否かをしっかり見極めよう

[著]:小川 潤也

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近年、大手M&A仲介会社を中心に、M&A業界では人材を大量採用する動きが加速しています。さまざまな業界から、若者を中心に人材が流入しているのです。

しかし、M&A会社の転職者営業マンは、M&Aの当事者となる企業にとっては要注意人物です。

今回の記事では、知られざるM&A業界の人材事情について解説します。

近年増えたM&A営業マンの人物像とは?

まず、最近M&A業界に大量流入している人材はどういう人たちなのかを解説しましょう。

典型的なのは、金融業界の営業担当者!

M&A業界に転職してくる営業マンの典型的なパターンは、銀行の融資担当や証券会社の営業などにいた20代の若手。

彼らは「営業対応に慣れている」「企業の財務資料が読める」人が多く、営業活動で企業とやりとりをこなせるのです。

さらに、金融業界に限らず通信系、人材系といった、法人相手の新規開拓を経験した人材も入ってきています。

こうした転職者はとにかく「営業力」が強み。

テレアポなどのストレスのかかるアプローチをまったくいとわず、ニーズがゼロの状態からでも商談によって成約に導く力を、M&A会社から期待されています。

なぜ、M&A業界に転職してくるのか

こうしたセールスパーソンたちは、なぜM&A業界に入ってくるのでしょうか?

その理由を一言でいえば、ただ「稼ぐため」です。

M&A会社は、なかなか契約が決まらない代わりに一件の成約による実入りが非常に大きいのです。

営業担当者の給与システムは、基本的にはインセンティブ(成果報酬)制ですから、成約額が大きいM&A業界は、野心的な営業マンにとって大きな魅力となります。

実際、あるクチコミサイトによれば、業界上位の大手M&A仲介会社ともなれば平均年収は1000万円を超えており、年収2000万円前後を稼ぐトッププレイヤーも少なくありません。

「どうせきつい営業をやるなら、インセンティブが多いほうがいい」と考えるのがセールスパーソンの性といえますが、このような高い報酬体系に惹かれ、他業界からM&A会社に転職する営業マンが後を絶たないのです。

転職者M&A営業に要注意!

しかし、転職者営業マンは、売り手企業にとっては信頼できるパートナーにならない場合がほとんどです。

とにかく「売らせる」ことが目的!

高い報酬を求めて転職してきた営業マンにとって、仕事の目的はとにかく相手の経営者に会社を「売らせる」こと。

M&Aによって本当に当事者にメリットがあるのか、売り手企業の長期的な繁栄をもたらすのかといった本質的な観点はお構いなしに、とにかく売却を迫ってきます。

ただし、迫ってくるといっても強引に押し付けてくるわけではありません。

セールスマンたちはとても口がうまく、自分たちに都合が悪い部分を隠し、嘘にならない程度の誇張をくわえながら言葉巧みに経営者をM&A契約に誘導するのです。

そんなスタンスの営業担当者に、会社の将来を左右するM&Aを任せるのは、とてもリスキーです。

契約だけして放置される!?

さらに、こうした営業担当者の口車に乗って契約を結んだ経営者から多く聞かれるのが、「契約後は放置された」というケースです。これには、大手M&A会社で多く採用されている「着手金」というシステムにからくりが潜んでいます。

M&Aの契約では、着手金だけで数百万円の支払いが発生します。いわば、契約後にM&A会社がなにもしなくても、着手金だけで丸儲けすることができるのです。

ひどい営業担当者だと、「契約さえ取れば、熱心に買い手を探すより次の売り手の契約を取りにいったほうが効率的」と考えて、契約後のフォローにまったく取り組まないケースもあります。

そうして契約後1年などの期間が経つと、契約更新という名目でさらにお金を取りにやってきます。

こんな営業マンと付き合っていたらM&Aが実現できないだけでなく、お金をドブに捨てるようなものです。

まとめ

現に当社に相談にいらっしゃったクライアントさまでも、「以前に他のM&A会社と契約して数百万円の着手金を支払ったが、無駄金だった」とおっしゃるかたが少なくありません。

口のうまい営業担当者があなたの会社にやってきたとしても、安易に信用せず、本当に自社のためを思って提案してくれているのかどうかを慎重に見極めましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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