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M&AのDD(デューデリジェンス)を金融機関に任せてはいけない3つの理由

[著]:小川 潤也

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M&Aで、買収を最終判断するために行なう徹底的な企業調査をDD(デューデリジェンス)といいます。

とくに買い手企業がはじめてM&A実施する際、「DDを誰に依頼すればいいのか見当がつかない……」という会社は多いでしょう。

よくあるのは、M&Aのために資金を調達した金融機関に相談し、DDを実施する関連会社を紹介するパターンですが、これはなかなか危険な選択といえます。

今回の記事では、その理由を解説しましょう。

金融機関の関連会社にDDを任せる3つのデメリット

金融機関にDDを相談してはいけない理由は、大きく分けて3つあります。

理由①手数料が高い!

まず、金融機関の関連会社が出す見積もりは、相場からいうとかなり高額です。

当社が見てきたなかには、金融機関の関連会社の見積もり額が、知り合いの税理士さんや弁護士さんと比べて3倍以上だったというケースがありました。

しかしDDの質は、必ずしも金額には比例しません。割高な料金でDDを依頼すると、買収後の事業収益性に響いてしまいます。

わざわざ手数料の高い金融機関の関連会社に依頼する必要はありません。

大手法律事務所もそうですが、金融機関の関連会社はフィーが高額です。そのためDDのレポートは分厚ものが届けられます。ページ数の多さは担当者の頑張りどころなのですが、なくてもいいのではという情報で水増しされていることが大半です。

自社のメインバンクだからといって、融資判断や今後のおつきあいに影響するかもという忖度は気にせず、安易に依頼することは避けましょう。

理由② 結果に対して無責任……

金融機関からDD案件を振られる関連会社にとっては、あなたの会社のM&AにおけるDDは、「単発のいち仕事」でしかありません。DDのレポートを作るだけのお付き合いということです。

いくら本体の金融機関が自社のメインバンクであり、取引先と長期にわたって付き合っているから、関連会社も自社のことをよく分かっているわけではありません。

金融機関は「グループとして一丸となって御社のM&Aをサポートします!」などというでしょうが、関連会社のDD担当者は、DDの責任を負うのは彼らですので、シビアな対応となります。

理由③ 経験不足の若手担当者がやってくる?

金融機関の関連会社にDDを依頼すると、多くの場合は高学歴な修行中の若手の公認会計士がやってきます。

若手の会計士に担当されるとはいえ、DDには組織として対応してくれるのでさほど心配はないように思えますが、問題は、彼ら若手士業の対応力です。

よくあるのが、DD対象の企業の経営者に対して、「あの資料を出してください」「この資料を出してください」と高圧的に命令するばかりというケース。しまいには、相手の経営者を怒らせてしまうという例もしばしば聞かれます。

DDの経験が豊富なプロであれば、DD対象の企業が話す内容をきちんと咀嚼して理解し、相手が嫌な気持ちにならないような細やかさをもって調査を進める力を持っています。

しかし、高学歴な修行中の若手士業に、そんな老練な対応は期待できません。

DDのせいで感情的なしこりが残るようでは、合併後の融合にも不安が残るので、ベテランにきちんと対応してもらったほうが安心です。

DDは誰に依頼するべきか?

それでは、DDは誰に依頼するのがベストなのでしょうか?

調査対象の会社をよく知っていることが重要

結論からいえば、DDは顧問税理士などの「身内」にやってもらうのがベストな選択です。

調査対象の会社のことをよく知っているほうが、もともとの理解があるため、スムーズに調査を進めることができます。

もしも身内でDDの経験を持つ人材がいない場合は、ディールのサポートを依頼しているM&A業者に紹介を頼むといいでしょう。M&A業者であれば、対象の業種に対する調査経験が豊富なプロを紹介してくれるはずです。

まとめ

「買い手も売り手もM&Aがはじめて」という場合は、両社ともにDDの意味合いを理解していない場合がありますが、DDはM&Aにおける最終関門といってもよいほど重要です。

DDの結果、簿外債務が発覚し、M&Aが破談になるというケースも、決して珍しくありません。

経験がないのに「DDできます!」とうたう怪しい業者も多いので、信頼できるすじから慎重に依頼相手を選びましょう。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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