ローカルM&Aマガジン

新型コロナウィルスは「M&A市場」にどう影響するのか

投稿日:2020年5月2日

[著]:小川 潤也

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周知のとおり、中国の武漢を震源地として広まった新型コロナウィルスが、列島のみならず全世界中で猛威を奮っています。

日本でも感染者の数は日々増え続け、4月末日現在、安倍内閣が発表した非常事態宣言に伴い多くの施設が営業を自粛している状況です。

賑やかだった繁華街は閑散としてしまい、多くの事業者の苦境がメディアによって伝えられています。テレワークの推進など外出自粛の余波により、ビジネスの現場は大混乱に陥ってしまいました。

本記事ではそんな最中において、M&Aのアドバイザリー会社としての立場から、コロナショックがM&Aと事業承継にもたらす影響を読み解いていきましょう。

企業経営の格差社会が始まった

コロナウィルス蔓延に伴う外出自粛、営業自粛の動きにより、既に飲食業、ホテルや旅行代理店、イベント会社を中心に多くの会社が大ダメージを受けています。中にはすでに破綻してしまった会社もあるようです。

おそらくコロナショックの影響は最短でも1年くらい続くことになるでしょうから、今後致命傷を負って倒れていく会社がますます増えることは間違いありません。

ただ、一方で業績不振の業界から逆に「M&Aで企業買収をしたい」という当社への問い合わせも増えています。この経済状況においても十分に耐えられるだけの財務体質の会社にとっては、経営難の企業が増える今だからこそ優良企業を買収する絶好のチャンス、というわけです。

金融機関も財務体質の元々良い会社には積極的にコロナショック対策の運転資金を貸し出す姿勢を示しています。コロナショックにより、企業経営の明暗がはっきりと分かれてしまったのが現状のようです。

安値での売買案件が増える?

さて、苦境に陥った売り手の目線に立って話すとすれば、今はM&Aによる売り時ではない、といえるでしょう。やはり、売り上げが落ちてしまったタイミングではどうしても譲渡価格が安くなってしまうからです。

また今後、破綻寸前になって安値でも売りたい、という企業が増えてきたら、M&Aの相場価格自体が下がってしまうことも考えられます。自社の経営を立て直そうという気概があるのであれば、まずはメインバンクや日本政策金融公庫からの融資、政府の補助金や補償金などを頼り、資金繰りを改善させて経営再生を試みたほうがいいでしょう。

自治体ごとのコロナ救済策については、下記のサイトにまとめられています。

・都道府県別 新型コロナウイルスに関する補助金・助成金一覧(令和2年4月17日更新)
https://hojyokin-portal.jp/columns/subsidy_prefecture

しかし、元々会社を畳んだり売ったりする意思があったような場合は、無理に再生や高値での譲渡を目指さずに諦めるのも一つの選択肢です。例えばおよそ10年前の東日本大震災で多くの企業が経営に大きなダメージを負った時も、「いい機会だから」と事業再生や親族内承継を諦めて、M&Aで売却したり会社を精算させたりしたオーナー経営者が多く見られました。

もう経営を続けるのはしんどいから、いくばくかのお金が入ればそれでいい。というのであれば、この機会にM&Aを決断するのも一案だと思います。

借金が精算できるのであればM&Aは一気に加速する

とはいえ買い手企業としても、安値であればどんな企業でも欲しいということにはなりません。コロナショック要因で売り上げが一時的に減少しているだけで資産超過の場合はいいですが、大幅な債務超過に陥っている場合は厳しくなるでしょう。

そうなると、債権者である金融機関の側がどれだけ債務の免除に応じるのかが大きなポイントになります。コロナショックが長引いて債務超過の企業が大量発生し、債務を減免するのがやむなしというトレンドになってくると、再生型M&Aによる売却を選ぶオーナー経営者が一気に増えてくることも考えられます。

そうすれば事業拡大を目論む大企業や、既存の会社を買って起業を目指す人にとっては追い風です。今後の流れ次第では、M&Aの件数増加ががぜん加速してくることも考えられるでしょう。

まとめ

現状では非常事態宣言の期間は5月6日までとされていますが、その後どうなるのかは今のところわかりません。感染の規模だけでなく、どの時点でもって終息として経済が日常に戻るかという線引きも難しいところです。

また、日本だけでなく世界の国でのウィルス流行状況も日本の景気動向に大きく影響します、コロナショックが日本経済にどれほどの影響を与えるのかは、まったく計り知れないのが実際のところです。

当社もまずはM&A業者として、売り手側、買い手側どちらの立場にある企業も、この危機を力強く乗り切れるよう祈っています。

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著者

小川 潤也

株式会社絆コーポレーション
代表取締役

1975年新潟県新潟市(旧巻町)生まれ。株式会社絆コーポレーション代表取締役社長。大学卒業後、株式会社富士銀行(現・みずほ銀行)入行。法人担当として融資、事業再生、M&Aなどの総合金融サービスを手がける。2004年、医療介護の人材サービスを手がける株式会社ケアスタッフの代表取締役に就任。また銀行勤務時代に培った新規取引先の開拓やM&Aでの経験を生かし、地方都市の後継者不在、事業承継ニーズに応えるべく、株式会社絆コーポレーションを設立。M&Aアドバイザリー事業、スペシャリストの人材紹介事業を展開。著書に『継がない子、残したい親のM&A戦略』(幻冬舎)がある。
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