経営者の半数近くが60歳を超えている現在、後継者不足は喫緊の課題。
後継者がいない社長は、どのような対応策をとるべきなのか。具体的な解決策を解説します。
中小企業の「大廃業時代」がやってきた
日本の中小企業は、年々減少傾向にあります。
小規模企業が激減!
1999年に485万社あった企業の数は、2016年時点で359万社まで減ってしまいました。
企業の規模別に見ると、すべての規模の企業が減少していますが、特に小規模企業の減少幅が大きくなっています。
業種別では、1999年時と比べて「電気・ガス・熱供給・水道業」、「運輸業、通信業及び情報通信業」の企業数が増加。一方で、その他の業種についてはおしなべて減少傾向にあり、「鉱業、採石業、砂利採取業」や「小売業」は特に減少率が高いです。
経営者は高齢者ばかり
日本における企業の廃業率が高い水準で推移しているのにはさまざまな理由が考えられますが、その大きな要因の一つが、少子高齢化です。
経営者の半数が60歳を超えている一方で、若い世代の数は減り続けているのです。
さらに、価値観の多様化によって「親の会社を継ぎたくない」と考える若い世代も増えています。
親の側としても、「経営環境が厳しさを増すなかで、子どもに会社を背負わせるのは申しわけない」と考える人が多くなっているようです。
その結果、経営の新陳代謝が行なわれず、後継ぎ不在によって望まない廃業を選ぶ企業が増え、深刻な社会問題になっています。
後継者不在をどう解決するか?
「廃業したくないのに後継者がいない!」――そんな経営者には、どのような選択肢があるのでしょうか。
親族にも従業員にも適任者がいない場合、事業承継の手段として次の3つが考えられます。
手段その1:社外からの招へい
同業他社の経営者経験者など、社外の人材を後継者にする方法です。
社外から迎え入れる「プロ経営者」であれば、経営の実績面・実力面ともに、信頼できる人材を選ぶことができます。
とはいえ、前社長自身の人脈だけで後継の適任者を探すのは、なかなか難しいもの。
最近では、プロ経営者をマッチングしてくれるサービスやサイトが登場しているので、頼ってみるのも一つの手です。
ただし、社外からの招へいは、自社の文化に合わずに早期退職してしまうケースが多いので、注意が必要です。
よそから来た人物がいきなり社長になるわけですから、従業員からの反発を生む可能性もあります。
「経営者としての実績があるから大丈夫!」と後継者に丸投げしてしまうのではなく、後継者が自社の文化や組織の性質をきちんと理解できるよう、前任者がていねいに引き継ぎをしてあげることが重要です。
手段その2:M&A
近年では、中小企業においてもM&Aによる事業承継が増えています。
M&Aで事業承継をする大きなメリットは2つ。
ひとつは、より規模の大きい会社の傘下に入ることで承継後の経営が安定すること。もうひとつは、オーナー社長をはじめとする引き継ぎ前の株主に、株式の売却代金が入る点です。
M&Aが成立すれば、後継者の選定は買い手企業に任せることができます。
後継者不足の悩みから一気に解き放たれるうえに、リタイア後の生活資金まで得られるのは、非常に魅力的です。
ただし、M&Aを首尾良く成立させるのは非常に難しいので、有能なアドバイザリー会社とタッグを組み、綿密な準備をもって臨みましょう。
手段その3:IPO(新規上場)
株式を上場させて、後継者候補を広く募集する方法です。
この方法の大きなメリットは、M&Aと同様、オーナー社長が大きな利益を得られる点です。
上場企業というステータスを得られれば、優秀な後継者を社外から募集するのも容易になります。
しかし、IPOは数年がかりで準備する必要がありますし、そもそも上場基準の高いハードルをクリアする会社の業績と体制を整える必要があります。後継者に悩む高齢の経営者にとっては、時間的にも体力的にも難しいかもしれません。
とはいえ、上場が可能なほど現在の業績がよく、「数年の時間をかけても大丈夫!」という余裕があれば、証券会社に相談してみるのもいいでしょう。事業承継前に上場して、引退するのはかっこいい引き際かもしれません。
まとめ
息子や娘が会社を継がないと決まった時点で、廃業の選択肢だけを考えてしまう経営者は多いのですが、そこであきらめてはいけません。
方法によっては、経営者が大きなメリットを得ながらスムーズに会社を引き継げる可能性もあるのです。
「後継者不在なら廃業しかない」と決めつけてしまうのではなく、あらゆる方法を積極的に模索してみましょう。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役