突如舞い込んだ「社長」という肩書と重圧。うまく事業を引き継げずに失敗してしまう後継社長も大勢います。
引き継ぎで失敗しないため、後継社長がどのようなことに気をつけるべきか、5つの鉄則を伝授しましょう。
鉄則①:先代と自分の違いを分析する
後継社長が必ずといって良いほどぶち当たる壁が、先代社長と比較されることです。
先代社長のカリスマ性が強かった場合は、従業員が自分についてくるか不安に苛まれるのも無理はありません。しかし、カリスマ社長の背中をそのまま真似しようとしても難しいでしょう。
そこで大事なのが、「自分なら何ができるのか」を整理することです。
自分の強みや弱みを分析し、先代社長の得意不得意と比較しながら、やるべき行動を精査していきましょう。自分なりの経営スタイルを早い段階で確立させ、会社全体を混乱させないことが重要です。
鉄則②:お金の流れと借金を把握する
経営者になって初めて意識する事柄の代表例が、会社の財務です。
数字が苦手なら細かい部分は経理や税理士に一任すれば良いですが、最低でも「資金繰り」と「借金の中身」の2点だけは把握しておいてください。
資金繰りで確認すべきポイントとしては、月・年・季節単位でどのようにキャッシュが出入りするのかと、会社の預金残高の推移です。現状の資金繰り予定で会社が1年後は大丈夫かを、明確に認識しましょう。
借金の中身で確認すべきポイントは、借金の目的、毎月の返済金額、残りの返済金額と期間、担保や保証人です。会社の財務体質を改善したり事業を発展させたりするため、適宜、借り入れの繰り上げ返済や追加の借り入れを行なわなければいけません。
鉄則③:ベテラン従業員との接し方には誠意を
多くの後継社長が勘違いしがちなのが、「社長は常に威厳を保たなければいけない」ということ。確かにトップに威厳は重要ですが、社長になって急に社員に偉そうに接するようになったせいで信頼を失う後継社長は珍しくありません。
重要なのは、誠意を持って従業員に接することです。わかりやすい例として、営業出身の後継社長がベテランの技術職の従業員とコミュニケーションをとるパターンを考えてみましょう。技術についてろくに理解していないのに技術者に対して偉そうに接してしまえば、反発は必至です。技術者の専門知識や過去の実績に敬意を持ちながら、もし経営者として意見に反論する場合は明確な根拠を示すようにしてください。
鉄則④:複数の銀行と接点を持つ
後継者にとって、銀行との付き合いは重要な仕事です。ほとんどの人が従業員時代には経験のない仕事のため、何を行なえばよいかわからない人も多いことでしょう。
しかし、銀行員と良好な関係性を保つことで、いざというとき好条件で融資を受けられる可能性も高まります。銀行と良い付き合いをするコツの一例としては、銀行員と仕事以外のプライベートな内容を話すなど人間味のある付き合いをしたり、銀行側が貸したいタイミングで少額でも融資を受けたりと恩を売っておくことがあります。
さらに、複数の銀行と付き合いを深めておくのも大事です。地域の有益な情報を得られたり、メインバンクの対応に不満が出た際にスムーズに他行へ切り替えたりすることが可能になるからです。
鉄則⑤:従業員と理念を共有する
後継者として会社を経営するうえで重要なのが、先代から経営理念を正しく引き継ぐことです。もし理念が明文化されていない場合は、事業承継をきっかけに理念を明文化しましょう。
創業以来、会社が存続・成長できたのは、創業の精神や経営理念があるからこそです。先代同様の理念を打ち出したほうが従業員はついてくるでしょうし、理念を突然変更すれば反発する従業員も出てくるでしょう。
経営者としての理想や経営における判断基準、取引先との付き合い方など、先代社長の意見も踏まえたうえで、会社運営に対する考え方を明文化することは重要です。後継者として新しい取り組みを行なううえでも、会社の理念に反していないか、逸脱していないかを確認し判断するのに役立ちます。
まとめ
今回紹介した5つの鉄則は、後継社長として失敗しないための重要な心構えです。これらの鉄則を認識し、必要に応じて準備しておくことは、実際に社長を引き継ぐ前でも可能です。
特に財務周りは会社を存続させるために重要な部分のため、承継が決まった時点である程度勉強しておいてください。
小川 潤也
株式会社絆コーポレーション
代表取締役