旅館業業界動向
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされている。旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない。(厚生労働省)
旅館業の種別
旅館業にはホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業の4種がある。
①ホテル営業
洋式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。
②旅館営業
和式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。いわゆる駅前旅館、温泉旅館、観光旅館の他、割烹旅館が含まれる。民宿も該当することがある。
③簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。
④下宿営業
1月以上の期間を単位として宿泊させる営業である。(厚生労働省)
ホテル・旅館等の現状とこれからの利用実態
ホテル・旅館業界は、活況に沸いている。日本政府観光局(JNTO)によると、2017年の訪日外国人旅行者数は約2869万人と6年連続で増加。観光庁の調査では、2017年の日本人国内延べ旅行者数は約6億4720万人と3年連続で増加した。
さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック効果もあり、今後さらなる増加が見込まれており、政府は2020年までに訪日外国人観光客数を4,000万人、2030年には6,000万人に拡大する目標を掲げている。
客室稼働率は、シティホテル78.7%、ビジネスホテル74.4%、リゾートホテル56.9%と高い稼働水準にあるが、旅館だけは37.1%と伸び悩んでいる。実際に近年、東京や大阪を中心とした大都市圏のホテル稼働率は80%付近を推移。人気ホテルではほぼ満室状態が続き、客室の平均販売価格も上昇傾向にあることから大都市を中心にホテルの開業ラッシュが相次いでいる。
ホテル・旅館等の収益性
客室は、ある時点で空きが出ると無価値になってしまう商品という性質を持つ。そのためホテル業界は、需要状況に応じて価格を変動させることにより収益の極大化を図っている。稼働率が高止まり傾向にある中で、今後、ホテル業界は稼働率を維持しながら客室単価を引き上げることが求められる。
ホテル・旅館経営を主業とする企業(7915社)の2016年度の収入高合計は、前年度を2.1%上回る4兆9012億2500万円と、過去10年で最高を記録した。
2016年度の収入高動向を年商規模別にみると、増収の構成比は「100億円以上」が62.1%を占め最高。
一方、「1億円未満」の増収の構成比は最も低い14.6%となった。年商規模が大きな企業ほど増収の構成比が高いことが判明し、年商規模による二極化が鮮明となった。
旅館の客室は1部屋当り収容人数が4~5人とホテル(2~3人)より多く、大浴場のみで客室に浴室を持たないケースが多いなど、団体旅行客向け施設が多い。近年では旅行の個人化・宿泊者ニーズの多様化が進んでいるが、その対応の遅れなどを背景にして、旅館の施設数は年々減少傾向にある。
旅館の施設数が減少する一方、ホテルは施設数・客室数ともに増加。東京・大阪エリアの客室不足等を背景に、外資系ホテル、異業種からの参入・新規出店拡大もあり、競争は激化。2018年6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)は施行され、民泊解禁による、異業種からの宿泊ビジネス参入もすすむ
ホテル業界 売上高ランキング (平成27-28年)
企業名 | 売上高(億円) | |
---|---|---|
1位 | 西武HD | 1,801 |
2位 | リゾートトラスト | 1,422 |
3位 | 東京急行電鉄 | 1,029 |
4位 | 京王電鉄 | 697 |
5位 | ホテルオークラ | 686 |
旅館業業界M&A動向
- 2016年8月30日、東武鉄道は栃木県の名門リゾートホテルを手がける金谷ホテル(栃木県日光市)を買収すると発表した。鉄道の沿線の日光地区でも訪日外国人客が増えている。名門ホテルを傘下に入れ、地域の観光資源を楽しむ旅行プランを提案するなどして訪日客らの観光需要を取り込む目的がある。
- 2015年10月28日、不動産賃貸業を中心とした運営を行うヒューテックは、東日本を中心にホテルなどを展開する日本ビューホテルの発行済み株式25%分を11月2日付で取得すると発表。ホテル事業に力を入れ始めたなか、運営ノウハウに実績のある日本ビューホテルと提携し、事業領域を拡大する目的がある。
- 星野リゾート(長野県軽井沢町)と星野リゾート・リート投資法人(東京)は、旭川グランドホテル(旭川)の全株式と建物を2016年3月31日付で取得。星野リゾートは「IT技術の進化により出張の必要性が減少する一方で、都市観光市場は世界で拡大しています。観光が専門分野である星野リゾートは、都市ホテルのサービスのあり方を変革することで、施設経営を最適化するだけでなく、ホテルが地域魅力を発信し新しい需要を創る役割を担えると考えています。」と発表した。